ITIL 的目标

ITIL推進マニュアル

異なるレベル、異なる期待値

第 3 章

これまで述べてきたように、3つの異なるレベルがあり、各レベルは特定の役割と目的を持ち、またITILに対する期待値もそれぞれ異なります。ITILの推進を成功させるために、それぞれの3つのレベルに活動の焦点を合わせ、各レベルへの期待値に対し、異なるコミュニケーションをとらなくてはなりません。

ITILの職能 戦略レベルでの期待値 演習レベルでの期待値 実践レベルでの期待値
サービスデスク
  • 組織の機能させ続けること
  • ビジネスの圧力と摩擦を減少させること
  • 顧客からの問い合わせ情報の保管場所を提供すること
  • 現システムの改善に必要な情報を提供すること(TCOを削減)
  • 新システム・新技術の導入方法を改善すること(ROIを増加)
  • 対顧客関係の管理
  • 技術者を不必要な業務の中断から保護することによって彼らの効率を向上させる(TCOを削減)
図4.サービスデスクに対する期待

図4は、3つのレベルでそれぞれ異なるサービスデスクに対する期待値を示しています。図から分かるように、戦略レベルは、サービスデスクができるだけ効率的に機能し、組織にあらゆる消費者問題あるいは苦情に関するデータを提供することに最も強い関心を示しています。方策レベルは、現システムへの変更と改良に関する情報により強い関心を持っています。またこのレベルは、将来のシステムと技術の円滑で実りある実施を期待しています。実践レベルが考えるサービスデスクは、リレーションシップを確立し、初回の問い合わせでできる限り多くのインシデントを解決することで、一流の顧客サービスを提供するというものです。

専門家やときにはアドバイザーを納得させ、彼らが戦略レベルに話を持ち込むようにするのが理想的です。ITILが戦略レベルに認められれば、より円滑に進むでしょう。しかし期待マトリックスによると、ビジネスの成功要因としてITILをうまく売り込むには、すべてのレベルに受け入れられ理解されるような幅広い根拠を必要とします。

ウェブ上での製品販売決定という前述の例では、戦略レベルがITILの採用を決定し、そして実践レベルが日常的にITILを使用します。

ITILサービス管理ポートフォリオでは、サービスデスクが唯一の職能です。

以下の図5は、ITILサービス管理プロセスに適用できる一般的な期待をいくつか示したものです。

ITILの職能 戦略レベルでの期待値 演習レベルでの期待値 実践レベルでの期待値
インシデント管理
  • ビジネスクリティカルシステムへのインシデントの影響
  • 新たなシステムとアプリケーションをサポートする能力(ROIを増加)
  • タイムリーで正確な方法でインシデントを解決する能力(TCOを削減)
問題管理
  • ビジネスクリティカルシステムからの弱点の排除
  • 節約、コスト、およびワークロードに関連するすべての問題の状態(TCOを削減)
  • 積極的なインフラの保護(TCOを削減)
  • インシデントの減少(TCOを削減)
変更管理
  • 組織が設定したタイムスケールを満たすためにビジネス上の変更を行き渡らせるスピード
  • 確実に変更を実行し組織の機能停止を最小限に保つ正確性
  • 変更の実行に必要なリソースの計画・管理(TCOを削減そして/または変更のタイプによりROIを増加)
  • 変更のライフサイクルのコントロール(TCOを削減)
リリース管理
  • ビジネスを遂行する上での悪影響を最小限にとどめる迅速かつ正確なリリース
  • インプリの成功のためにリリースには正確な情報があることの確信。リリーススケジュールの計画(ROIを増加)
  • ニューリリースの実行の際それらをサポートする能力(TCOを削減)
  • 系統的な方法でリリースすることによりスタッフと資源を管理(TCOを削減)
サービスレベル管理
  • 新ビジネスシステムのコストと影響を見積もるために現在のサービスレベルの認識
  • 新ビジネスシステムと確実に統合する新サービスレベルを定義する能力(ROIを増加)
  • 同意されたサービスレベルと実際のサービスレベルの差異を特定し適切に対処することができるように、それぞれを比較する(TCOを削減)
  • 現行システムの将来の需要を満たすのに充分なキャパシティ(TCOを削減)
キャパシティ管理
  • ポテンシャルのある新ビジネスシステムの影響とコストのデータを提供するための、現在のキャパシティの認識
  • 新ビジネスシステムの実行を可能とする十分なキャパシティ(ROIを増加)
  • 現行システムの将来の需要を満たすのに充分なキャパシティ(TCOを削減)
アベイラビリティ管理
  • ポテンシャルのある新ビジネスシステムのアベイラビリティへのニーズへの影響とコストの評価を可能にするための、現在のアベイラビリティレベルの充分な認識
  • 新ビジネスシステムの実行に充分なアベイラビリティ(ROIを増加)
  • ビジネスシステムの日々の需要を満たすのに充分なアベイラビリティ
  • ITスタッフが継続的に改善されたサービスを業界に提供することができるように、信頼性の向上を可能にするために照合されたデータを修正(TCOを削減)
財務管理
  • IT拡大に向けた今後の決定を行うための正確で信頼性のある財務情報
  • 新たなビジネスシステムおよびビジネスサービスのサポートに必要なコストを正確に計算することが可能(ROIを増加)
  • 新たなビジネスシステムおよびビジネスサービスの実行に必要なコストを正確に測ることが可能(ROIを増加)
  • カスタマーの期待に沿うパフォーマンスの実現と改善に充分な財源がある(TCOを削減)
ITサービス継続管理
  • 恐慌または災害の間に同意したパラメータに従ってビジネスの機能が継続する
  • 同意したスケジュールに従い恐慌または災害からITは、回復することができる
  • 新ビジネスシステムには、実行されれば即座に機能する充分な継続プランがある
  • 新ビジネスシステムは、現行システムの継続プランに悪影響を与えることはない
  • 現行の完全実証済みの継続プランが存在し、ITスタッフがそれらのプランに従うよう充分教育されている
構成管理
  • IT部門は資産を完全に管理し、すべての資産とそれらのロケーション、そしてそれらの関係の説明を含む正確なデータベースを維持する
  • IT部門はすべてのライセンスを完全に管理し、第三者であるベンダーあるいは他のサプライヤーとの契約書に詳述される同意済ライセンス条件も超えることは決してない
  • IT部門には、組織が所有していない、または使用していないリソースの代価を払わないようにするための、正確で完全な構成データベースがある
  • IT部門には、新ビジネスシステムの影響度を審査するために正確で完全な構成データベースがある(ROIを増加)
  • IT部門には、実施後に起こりうる失敗を最小限に抑えた新ビジネスシステムの効率的な実行を確実にする、正確で完全な構成データベースがある
  • IT部門には、影響とプライオリティを正確に定めることができることを確実にする、正確で完全な構成データベースがある
  • IT部門には、サービスデスクやサービスデリバリープロセスが、ダイナミックなサービスの提供や自動回復などの業務のリソースとしてのデータベースを使用することにより時間と労力を削減することができる、正確で完全なコンフィギュレーショ構成データベースがあります(TCOを削減)
図5 期待マトリックス-ITILサービスマネージメントプロセスの期待

これらの期待値を調べることによって、その期待値と組織との関連を測ることができます。理想的には、図5に示すようなテンプレートに自分の組織の状況を反映するよう適宜変更を加え、独自の期待度チャートを作成するとよいでしょう。後に、統計的・財政的な規準に応える利益や節約に関する事項を加えたくなるかもしれません。

図5に示す期待度マトリックスの自由度は、報告やプレゼンテーションを行う際に大きな助けとなるでしょう。特定のレベルに対する正当性を準備するためには「列」の情報を、また変更管理などの特定のプロセスに対する正当性を準備するためには「行」の情報を使用します。報告やプレゼンテーションを綿密に計画することにより、即座にかつ一貫して特定の人間あるいは部門との関連性の根拠を主張することができます。

> > 第 4 章 - 中心人物の期待の特定